メンタルヘルス不調による心の病気には、鬱病のほかにもいろいろな種類があります。

こうした精神的な病気は、仕事にどんな影響があるのか心配する人も多いかと思います。

正しい知識で適切なケアが行えるよう、それぞれの病気ごとに説明していきます。

自分、あるいは会社など身近で具体的に心配な人がいる場合は、どれが該当するかチェックしてみましょう。


働く人のメンタルヘルス不調

働く人の半数以上が仕事でなんらかの悩みやストレスを感じています。

これってかなり多いですよね。

労働者のストレス状況

「強い不安、悩み、ストレスを感じている」58.0%

「強い不安、悩み、ストレスを感じていない」41.2%

「不明」0.8%

出典:厚生労働省 平成19年労働者健康状況調査「精神的ストレス等の状況」

これだけの人が仕事に強い不安やストレスを抱えていれば、さらに調子を崩して病気になる人が多いのもうなづけます。

    Q.そもそもメンタルヘルスとは何?
    A.メンタルヘルスとは、精神面(メンタル)における健康(ヘルス)の意です。

    Q.メンタルヘルス不調とは何?
    A.精神的健康が害することで、精神障害を発症すること。

    いわゆる「心の病気」です。

    Q.精神障害には、どんなものがある?
    A.代表格は「うつ病」です。

    その他には、「パニック障害」「適応障害」などがあります。

    Q.精神障害に罹ると、どんな症状が出る?
    A.以下に代表的な精神障害の説明をします。

    自分と周囲の人たちのためにも、知識として正しく理解をしておいてください。

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1. うつ病

精神障害と言えばうつ病といわれる位、代表的な心の病です。

症状

(1)早朝覚醒

最初に必ず現れる特徴的な症状は、早朝覚醒といわれる朝早く目覚めるタイプの不眠です。

また、「睡眠障害」として以下のような症状が見られます。

  • 寝つきが悪い
  • 途中で目が覚める
  • 寝た気がしない

(2)日内変動

日内変動といわれる状態も特徴的な症状です。

朝に調子が悪く、午後に調子が出て来る状態が見られます。

(3)罪責感

罪責感を抱く症状。

「仕事がまったくできていない。最低な人間で、給与泥棒だ」と自己評価の低下を抱きます。

この自責感により「死んでお詫びする」という気持ちに至ることもあり、要注意でもあります。

(3)自殺願望

通常は死にたくなるほどの苦しみを体験しても、生きたいという気持ちのほうが勝つのですが、死にたいという気持ちの方が強くなるとすれば、「抑うつ状態」にあると考えられます。

(4)否定的認知

自分に対しても周囲に対しても、将来に対しても悲観的に捉えてしまい将来は無いと考えてしまう事です。

(5)食欲低下・体重減少

「食べても美味しいと感じない、何か食べたいという気持ちになれない」から「食べたくない、食べて吐く」なり、体重の減少が見られます。

(6)意欲低下

脳のエネルギーレベルが低下することで、意欲の低下という特徴的な症状が見られます。

「やる気がしない、意欲が出ない」という状態になります。

(7)注意力・集中力の低下

これによりミスや事故が発生します。

仕事の能率が悪くなり仕事がはかどらず残業が増え、よけいに無理が重なることでうつの状態が悪化し、悪循環に繋がります。

治療

まずは何よりも休養を十分とることが重要です。

うつ病の人は真面目な人が多いため、会社に迷惑をかけているとして焦りが強く早期の復職を希望しますが、「十分休むこと」が治療のポイントであると同時に再発防止のコツです。

薬物療法には精神安定剤・抗うつ剤・睡眠薬が使用されます。

最近の薬は従来の薬に比べ副作用も少なく、効果も高くなっていて安心して使用できます。

自分勝手に服用を止めることが、再発の最大の原因になります。

ポイント
    1)早期発見・早期治療
    2)十分な休養
    3)薬物療法を医師の指示通りに行う

うつ病は『治る病気』ですから安心して下さい。

うつ病で退職~再就職までどう過ごせばいい? 再発防止に大切なこと


2. パニック障害

症状

パニック発作による「動悸・震え・息苦しさ・めまい」などの症状が急に生じて、「死んでしまうのではないか」 という恐怖感を伴うことが多いです。

「予期不安」と言い、パニック発作を体験した人は「再びパニック発作が起こるのではないか」という不安を抱くことが多いです。

短期間で治ることが難しく、慢性化することが多いとされています。

治療

上記症状が見られた場合は必ず内科医等で無く、精神科医を訪れ治療を受けましょう。

抗うつ剤・抗不安薬の薬物療法と認知行動療法の併用による治療が用いられます。

「ストレスが引き金になって起こる自律神経の乱れから生じる症状」の病気で、決して死に至る病気ではありません。

職場のストレスによる発症要因が多い為、要因となる労働時間や配置転換を実施するなどの対応が必要です。

パニック障害は、専門医による治療を行なえば再発の可能性の少ない病気です。

安心して治療に専念しましょう。


3. 適応障害

症状

職場という環境において「人」と「環境」との適応が上手くいかなくなる状態をいいます。

治療

治療は「適応障害の原因が何か?」を特定し、その原因を除去することです。

ストレス要因が無くなると速やかに回復しますので、職務内容の変更・配置転換などを行うと同時に薬物療法によって治療します。

他の精神障害に比べて軽症の場合が多いです。


4.不安障害

症状

人前で話をすることにより、

    「その人達から悪い評価を受けるのではないか」
    「失敗して恥ずかしい思いをするのではないか」

と不安を抱いたり、震え・発汗・動悸などの身体症状が現れ、仕事などの日常生活に支障をきたすこと。

治療

薬物療法(抗うつ剤と抗不安薬の投与)と心理療法の併用による治療で、改善することが明らかにされています。

5.心的外傷後ストレス障害(PTSD)

症状

通常の日常生活においては体験しない様な衝撃的な出来事に遭遇した際に生じるトラウマ(心のキズ)への反応の中で、特定の症状が出る病態を言う。

*代表例=ベトナム戦争の帰還兵、9.11アメリカ同時多発テロの被害者、東日本大震災の被害者、犯罪・大きな事故や災害の被害者など

追体験(フラッシュバック)、精神的不安定による不安・不眠などの過覚醒症状など

治療

抗うつ薬を中心とした薬物療法と心理療法(認知行動療法)が良好とされています。


6. パーソナリティ障害

症状

人格上の偏りが、社会生活上に問題を生じるレベル。

他責(他人を責める)傾向が強く、自分に問題があると思わない。

治療

心理療法が中心であり、必要に応じて薬物療法を併用することがあります。

7. 統合失調症

症状

物事に対して誤った意味付けをしたり、現実にない体験をしているように感じる妄想や幻覚、まとまりのない行動をするなどの症状があります。

100人に1人がかかると言われており、稀な病気ではありません。

治療

脳の神経と神経の間で、情報を伝えるための神経伝達物質が過剰に働いてしまうことで、脳の神経が過敏になることで生じる病気です。

治療には脳内の神経伝達物質(ドーパミン・セレトニンなど)に作用する薬を投与することが有効とされており、入院して心身を休めることが重要です。

特に、治療や生活を支えていく上で、家族の援助が有効で一番大切なことです。


あなたとあなたの職場は大丈夫?
メンタルヘルス不調への対応で大切なこと

「仕事に強い不安、悩み、ストレスを感じている」と回答した人の割合は、厚生労働省の精神的ストレス等の状況調査によると、労働者全体の半数を超えています。

仕事が原因で心の病気になる人は増加傾向にあり、あまり良い意味ではないですが、「メンヘラ=精神疾患・精神障害を持つ人」というネットスラングもあります。

  1. 正しい知識ち、自分自身が「ストレスへの気づき」を持つことが最も重要
  2. 「メンタルヘルスへの偏見」を自分自身がなくすことで、「恥ずかしい、情けない」と思わず、自発的に相談する
  3. 会社や家庭での相談しやすい環境「日頃の会話の場」をつくること

これらがあれば、メンタルヘルスの問題=心の病気になりかけても、適切な対応がとれ早期の治療や再発防止に繋がります。

企業でしっかりとした予防対策がうたれていれば、メンタルヘルス不調者を出すことなく、職場内のコミュニケーションは活性化されており職場の生産性も高いはずです。

自分のメンタルヘルスチェックはもちろん大切ですが、周囲にも気を配って、できれば会社組織を上げてメンタルヘルスケアに取り組めるといいですね。

もし、自分あるいは、職場内で、ちょっと調子が悪そうだな…と思ったら、早めに対処してあげてください。

職場で強いストレスを感じている人は、
職場でのストレス症状。胃・腸・心が病む前にチェックする項目

うつかも?と思ったら、
鬱チェック。もし、うつ病なら、診断・治療・職場復帰はどうなる?

退職したいと言い出しにくいときは……

心のケアで、あなたとあなたの職場での仕事がもっと楽しくなりますように。