会社があるのに、朝起きられない。
根性がないから?それとも生活が乱れているから?
以前は大丈夫だったのに、なぜか最近起きられないという人のために、体のメカニズムの面から、朝起きれなくなった原因を探ってみます。
生活習慣を改善したり夜寝る前に少し工夫をしたりするだけで、慢性的な悩みから解放されるかもしれません。
いろいろ試してもどうしても朝起きられないという人、もしかしたら病気が隠れているかもしれません。
考えられる病気や症状についてもお知らせします。
朝起きられないのは、体のメカニズムの乱れ
「やばい、遅刻する!」「しまった、二度寝した」
誰でも、一度や二度はひやりとした経験があるものです。
でも、こんな状態が毎日だとしたら、ちょっとおかしいと思いませんか?
仕事に支障が出るだけでなく、会社や取引先からの信用も失いかねません。
そもそも十分に睡眠がとれていれば、朝は自然に目は覚めるものなのです。
朝起きられないというのは、睡眠と覚醒のリズムやサイクルが乱れている証しです。
もちろん「絶対に起きるんだ」という意志の力は大切です。
しかし体のメカニズムをよく知って精神面だけでなく身体面からも準備を整えると、すがすがしい朝を迎えることができ、1日を気分良く、効率良く、生産的に過ごせるようになります。
朝起きられない原因とは?
まず、朝起きられない原因にのようなものがあるか見ていきましょう。
セロトニンとメラトニンの不足
セロトニンは、ノルアドレナリン、ドーパミンと並ぶ三大神経伝達物質と呼ばれ、体内でさまざまな働きをしています。
体内のセロトニンのうち、およそ90%は小腸などで消化器官の調整をし、8%は血液内で血管の収縮などの機能をつかさどっています。
脳内で神経伝達物質として働いているのはたった2%なのですが、覚醒と精神の安定という重要な働きをしています。
セロトニンが不足すると、以下のような症状が出ます。
- 寝つきが悪くなる
- 朝の目覚めが悪くなる
- 精神的に不安定になる
睡眠にはメラトニンというホルモンが関係し、夜になるとメラトニンが分泌されて眠くなります。
メラトニンはセロトニンを元に作られていますから、セロトニンが不足するとメラトニンも減ってしまうのです。
朝起きられない人は、セロトニンが不足して眠りのリズムが乱れ、必要な時間に眠れない、あるいは起きられない可能性があります。
眠りの質が低い
睡眠にはノンレム睡眠とレム睡眠の2つがあります。
- レム睡眠:浅い眠りで体は眠っていますが、脳は活発に活動しています。
ノンレム睡眠:深い眠りで、体も脳も休んでいる状態です。
人はノンレム睡眠のときに1日の疲れを癒し、ストレスを消去しています。
また、成長ホルモンなどもノンレム睡眠によって分泌が促されています。
したがって、ノンレム睡眠の時間が短いと疲れが十分に取れず、朝、希望通りの時間に起きることができなくなるのです。
自律神経の乱れ
自律神経には交感神経と副交感神経があります。
交感神経:起きているときに優勢になる神経で、いわば体も脳も興奮状態にあり、緊張やストレスに対処できる態勢になっています。
副交感神経:リラックスしているとき、眠っているときなど、体や脳を休めているときに優位になる神経で、疲労回復や体の修復に必要な状態を作っています。
「夜寝床で考え事をしてなかなか眠れない」という経験はありませんか?
この場合は、不安や憂うつなどが原因で交感神経が優位になり、睡眠が妨げられているのです。
また、睡眠ホルモンのメラトニンは副交感神経を優位にする働きがあるので、セロトニンとメラトニンの不足も、副交感神経の作用に大きく関わっています。
朝起きられない人は自律神経の働きが乱れ、本来なら副交換神経が優位になるべきときに、交感神経が活発になって寝不足となり、起きられない状態になっている可能性があります。
体内時計の乱れ
人間には体内時計が備わっており、覚醒している時間帯と眠くなる時間帯が交互に訪れます。
通常、夜は眠くなるサイクルが、朝明るくなると覚醒のサイクルがやってきます。
朝、太陽の光を浴びると体内時計の覚醒スイッチが入ります。

すると睡眠ホルモンのメラトニンの分泌が止まり、セロトニンが分泌されます。
そして14〜16時間後に再びメラトニンの分泌が始まる、というサイクルになっているのです。
しかし、徹夜をしたり遅くまで蛍光灯の明るい光に当たったりしていると、この周期が乱れてしまい夜眠くならないだけでなく、朝になっても覚醒のサイクルにならず寝坊してしまうのです。
改善方法はあるの?
これまで、朝起きられない人にありがちな体内メカニズムの乱れを見てきましたが、自分に当てはまりそうなものはありましたか?
次に、そうした状態をどのように解消していくのか、具体的な方法を見ていきましょう。
セロトニンを増やす
1. 規則正しい生活をする
セロトニンは、昼間に多く分泌されます。
そして、夜間には睡眠ホルモンのメラトニンが分泌されます。
ですから、昼夜逆転しない生活をするように心がけることが大切です。
2. 軽い運動をする
階段の上り下り、ウォーキングなど、軽い運動はセロトニンの分泌を促します。
腹式呼吸で腹膜を刺激するのも効果があります。
朝、多少眠くてもストレッチなど、軽い運動をするとセロトニンが分泌されて覚醒モードになります。
3. よくかんで食べる
食事の際によくかんで食べるようにします。
かむと顎の筋肉を刺激し、その信号が脳に伝わりセロトニンの分泌を促します。
朝食は抜かずに、しっかりかんで食べるようにしましょう。
4. トリプトファンを含む食品をとる
小腸にあるセロトニンは、脳に入ってくることができません。
そのため、神経伝達のためのセロトニンは、脳内で合成される必要があります。
脳内でセロトニンを合成するのに必要な物質が、トリプトファンです。
トリプトファンは体内で合成できないため、食物から摂取するしかありません。
トリプトファンは肉類、赤身の魚、アーモンドやヒマワリの種、チーズや牛乳、そば、納豆などに多く含まれています。
眠りの質を上げる
1. 入浴方法に気をつける
スムーズに入眠するには、体の奥の体温、深部体温を下げるのが効果的です。
就寝する2時間ぐらい前に、40度ぐらいのお湯に15〜20分程度つかります。
入浴後、体の表面から熱が放射され、深部体温がゆっくりと下って眠くなります。
42度以上の熱いお湯に入ると、交感神経が優位になるので逆効果です。
2. 照明に気をつける
寝る1時間前から、照明は暗めにします。
暖色系の明かりにし、白色の蛍光灯は避けましょう。
特にLEDのブルーライトは、睡眠ホルモンのメラトニンの分泌を妨げます。
また、スマホやタブレットの明かりもメラトニンの分泌の邪魔をするので、寝る1〜2時間前から触らないようにします。
3. 食事時間に気をつける
食べたものを消化するのに2〜3時間かかるといわれています。
寝る直前に食事をしてしまうと、睡眠中に胃や腸が活動し深い眠りになりません。
少なくとも、寝床に入る2時間前には食事は済ませましょう。
4. 寝酒をしない
寝る前にお酒を飲むと、寝つきは良くなります。
しかし、アルコールは交感神経の活動を高めるため眠りが浅くなります。
お酒を飲む場合は適量を守り、寝る1〜2時間前には切り上げましょう。
5. 布団と枕を選ぶ
体に合った布団と枕を選びましょう。
横になったとき体重の4割ほどが腰にかかりますので、腰の部分が沈み込まない布団やマットを使うのがコツです。
枕は後頭部が2~6センチ、首の部分が5~9センチの高さのものが一般的です。
ただし、個人差があるので、自分に合った高さを見つけましょう。
今使っている枕にタオルなどを畳んで乗せることで、高さの調節ができます。
自律神経を整える
1. 太陽を浴びる
自律神経は、体内時計とも密接に関連しています。
朝起きたとき、太陽の光を浴びます。

理想的には15〜20分程度といわれますが、忙しい時は5分程度でも効果があります。
太陽光を浴びることで体内時計がリセットされ、セロトニンが分泌されることで睡眠サイクルが整います。
こうした本来のサイクルを整えていくことで、自律神経も正常の働きを取り戻します。
2. 腹式呼吸をする
普段の呼吸は、短い胸式呼吸になっています。
胸式呼吸は交感神経を刺激します。
これにストレスや緊張が加わると、交感神経優位の状態が続いてしまいます。
忙しい人は交感神経が興奮した状態が続き、自律神経のバランスが崩れがちです。
一方、副交感神経は加齢とともに活動が低下していきますから、意識して副交感神経を優位にする状態を作らないと、ますます交感神経優位の状態が続くことになります。
副交感神経を刺激するには、鼻から大きく息を吸い込みお腹を膨らませる腹式呼吸を試してみましょう。
深くゆっくりとした呼吸になり、肺の奥まで空気が行き渡ります。
副交感神経が優位になりリラックスした状態になります。
体内時計を戻す
1. 太陽を浴びる
自律神経の調整と関連しますが、太陽の光を浴びることで体内時計がいったんリセットされます。
しっかりと目が覚めると交感神経が優位となりセロトニンが分泌されます。
体内時計がリセットされると、その14〜16時間後に睡眠ホルモンのメラトニンが分泌されますので、覚醒と睡眠のサイクルがうまく機能するようになります。
毎朝きちんと太陽の光を浴びればいいのですが、そもそも朝起きれてない、起きたい時間に太陽の光が浴びれるような環境でない人もいます。
そんな場合に利用したいのが光目覚ましです。
光目覚ましのライトは、家庭の照明よりも明るく、太陽の光に近いような直視するのが難しいほどの明るさなので、こうした機器を使ってみるのもいいでしょう。
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たとえば起きる時刻を6時半、光り始めるタイミングを30分前にセットすると、6時を過ぎた頃から目覚まし時計が少しづつ明るくなり始めます。だんだんとまぶしさを感じるようになり、とても穏やかに眠りから覚めることができます。
2. 規則正しい生活をする
- 朝、同じ時間に起きる
- 同じ時間に食事をする
- 夜更かしをしない
これだけで、体内時計は規則正しく機能します。
そもそも朝起きられないわけですから最初は難しいかもしれませんが、規則正しい生活を意識的に行って、少しずつ体を慣らしていきましょう。
それでも朝、起きられない場合に疑う病気
いかがでしたか?体のメカニズムの改善はできそうですか?
もし、これまで見てきた改善策を試してもまったく効果がない場合、他にどのような原因が考えられるのでしょうか?
ひょっとしたら病気が隠れているかもしれません。
考えられる疾患と主な症状をあげておきますので、自分の状態と照らし合わせて、思い当たる場合は思い切って病院で医師や専門家に相談しましょう。
原因がはっきりわからない場合は内科がいいでしょう。
低血圧
最高血圧が100mmHg以下の状態です。
女性の5人に1人は低血圧ともいわれています。
朝起きられないという他に、
- 急に立ち上がると立ちくらみや目まいがする
- 疲れやすく疲れがなかなかとれない
- 肩こりや頭痛がある
といった症状もあります。
血圧を測ってみて最高血圧が100mmHg以下であれば、低血圧である可能性があります。
うつ病
精神的なストレスやホルモンバランスの変化などが原因で起こります。
症状は、
- 食欲がなく、1カ月で5キロ以上も痩せる
- 頭痛・動悸がする、微熱がある
- だるい、目まいがする
- やたらと汗が出る
- 何もやる気がしない
などです。
朝起きられないだけでなく、こうした症状がある場合はうつ病を疑いましょう。
睡眠時無呼吸症候群
寝ている間に短時間、呼吸が止まる病気です。
主な症状は以下のとおりです。
- <寝ている間の症状>
- いびきをかくが、突然、短時間呼吸が止まり、しばらくして大きな呼吸とともにまたいびきをかく
- 寝汗をかく
- 夜中に何度も目がさめる
- <起きたときの症状>
- 頭が痛い
- 体が重い
- 口が渇いている
- 熟睡した感じがしない
上のような症状があって、タバコを吸う、お酒が大好きで寝酒をする、肥満体質、高血圧、糖尿病、高脂血症、などに当てはまる人は、ひょっとすると睡眠時無呼吸症候群かもしれません。
睡眠相後退症候群
難しい言葉ですが簡単にいうと、睡眠時間帯が正常な状態より後ろにずれることです。
たとえば以前は夜の11時に寝て朝6時に起きていた人が、何らかの原因で夜11時になっても眠れず、睡眠時間帯が夜2時から朝9時などにずれてしまう状態です。
原因としては、昼夜逆転の生活、夜遅くまで仕事や勉強をする生活が続くことがあげられます。
自律神経や体内時計を調整すると改善するのですが、自己流では上手くいかない場合は専門の施設で専門家による指導のもとで調整するという方法もあります。
むずむず脚症候群
脚にむずむずした違和感があり、よく眠れない。
- 電車や映画館などでじっと座っていると、脚にむずむず感が出てきて脚を動かさずにいられない
- 歩いたりして脚を動かすと不快感が軽減する
- 夕方から夜にかけて脚の不快感がおこる
こういった症状があると、むずむず脚症候群が疑われます。
脚の不快感によって睡眠の質が低下し、朝起きられなくなり日中に眠気に襲われます。
鉄分の不足や脳内のドーパミンが十分に機能しないなどの原因が考えられますが、慢性腎不全やパーキンソン病が原因のこともあります。
この病気にかかると、心筋梗塞や脳卒中の発症リスクが通常の2倍以上になるといわれますので、症状に心当たりがある人は専門医に相談することをお勧めします。
すべては整えることから始まる

朝起きられないのは必ずしも意志が弱いから、というわけではありません。
生活習慣や食生活の乱れによる、体内メカニズムの不調が大きく関係しているのです。
乱れを正し、ちょっとした工夫をすることで、希望通りの時間に起きられる人になれます。
自分に合った方法を早速試してみましょう。
すっきり目覚める方法
→「朝起きられない…朝が苦手な人がスッキリ目覚める17の対策」
それでも改善しない場合は、意外な病気が隠れていることがあります。
他に気になる症状や体調不良がないかを確認して、心配なら専門医に相談してみましょう。
あなたがスッキリと朝の光を浴びて、起きれるようになりますように。