ボランティアと聞くと、復興支援や社会的弱者などへの支援を思い浮かべる方が多いと思います。
でも、これからご紹介する「プロボノ」は単なるボランティアではなく、自分の(仕事の)スキルを活かしたボランティアです。
プロボノとは、ラテン語で「公共善のために」を意味する pro bono publico の略で、最初は弁護士などによるボランテイア活動を指しましたが、いまではさまざまな業種の人がプロボノを通じて活躍しています。
まだまだ聞き慣れない言葉ですが、プロボノの仕事の種類、どんなメリットや気をつけておきたいことがあるかなどわかりやすく解説します。
プロボノの仕事、活動職種の例
プロボノの活動は期間が決まった仕事であることが多いです。
短いもので数日間、長いもので数ヶ月程度です。
プロボノはあくまでボランティア業務であり、業務を依頼した組織が自立して事業を行うことがベースとなっています。
そのため、経営方針を決める際のアドバイスや、ホームページ作成をするといったように、ルーティーンワークではなく普段後回しになってしまっている業務に対する支援依頼が多くなっています。
<プロボノの募集内容事例>
- プロジェクトマネージャー:プロジェクトチームのリーダー役として、スケジュール策定、チームメンバーの進捗状況確認をし、プロジェクトを円滑に進めていく
- マーケティング:市場ニーズを細分化し、販売戦略を策定する
- ウェブデザイナー:ウェブサイトのデザインづくり
- ITエンジニア:業務管理システムの設計
- 司法書士:公的機関への提出書類のチェック
- 営業:新規開拓支援
- 新規事業開発
- 広告・デザイン・ライター:広告の制作スキルの提供
- 映像:社内イベントの撮影
- 事務:一般事務アシスタント
- 広報・IR:プレスリリースの作成
- 財務・会計:銀行への資金調達計画の策定
- 企業研修インストラクター:従業員への各種研修の実施
- イベント制作:新商品プロモーション
- 通訳:海外からの視察への対応サポート
・・・・・などなど。
さまざまなジャンルの仕事、活動が求められているので、あなたの仕事のスキルを発揮する場もきっとあるはずです。
プロボノを通じて得られるのは?
1.人脈・ネットワークづくり
通常サラリーマンが、社内や取引先以外の人との繋がりを持つ機会はとても少ないです。
せいぜい学生時代の友人などと繋がりを持ち続けるぐらいではないでしょうか。
プロボノをする一番のメリットとして、社外の人たちと繋がる機会を得ることを上げる人は多いです。
自社や同じ業界の人たちとばかり付き合っていると、思考を偏らせてしまいます。
社外の知り合いを増やすことで、より広い視点、ニュートラルな考えを持てるようにもなるでしょう。
一方、勤めている会社の慣習や社風からくる阿吽の呼吸が通じない、といったことがあります。
メンバーの経験やスキルなどもバラバラです。コミュニケーションには気をつける必要があります。
プロボノ活動を行う先は、プロボノの仲介会社(コーディネーター)による紹介が一般的です。
自分の希望を伝えて、これはという人と知り合えるような活動を探すことができます。
2.スキルの向上
プロボノは出向いた先で、一人でなにかするということは少なく、チームで活動することが多いです。
同じ目的に対して他社や異業種の人たちがチームメンバーに加わることにより、普段の自分の仕事とは異なるアプローチを学べます。
プロボノとして活動する人は、意識が高く、特別な能力・スキルを持っている人も少なくありません。
こうした人たちと接することで、ビジネススキルを向上させ、仕事以外のことでも得られるものは多いでしょう。
3.自分の市場価値を知る
サラリーマンの多くはまだまだ兼業、副業が禁止されています。
そのため、自分の仕事が社会でどの程度役に立つのか、市場ではどのぐらい求められているかを知ることができません。
年齢や業種による給与水準が示されますが、人材としての価値は、はたしてそれを信じて良いのでしょうか?
流動性が低い業種においては生え抜き社員が重宝され、転職が難しい、あるいは転職社員は給与水準が下がってしまう、ということもあり得ます。
逆に、自分が思った以上に市場価値が高いことも十分に考えられます。大切なのは、正確に自分の市場価値を知ることです。
それにより他会社に転職する、あるいは不足部分を補うべく学びに集中する、といった戦略づくりができます。
プロボノをしている時に「仮にお金を払って貰うとするといくらになるのか。」ということを周りの人に聞き、自分の市場価値を把握することができます。
普段の仕事が社外で評価されることは、自分を知ることに繋がります。
さらには、すぐにお金にならなくても他者に評価され、感謝されることは、自分の活力源にもなります。
4.意外な出会いの場
本業として正社員で勤めている会社の職場では同性ばかりで恋愛的な意味での出会いがない…。
アラサー、アラフォーくらいの年齢で、こんな悩みを持っている人は多いですよね。
プロボノの受け入れを行っている企業は、あなたが普段接している同じ職種の人になじみがない…だから求められているわけですので、そこではいつもの職場とは違ったタイプの人がたくさんいるということが想像できるかと思います。
つまり、普段出会えないような異性と知り合うチャンスが大きい!ということです。
プロボノの活動は期間限定であるため、気になる人がいてもダラダラといつまでも声をかけられない…ということにならずに、思い切ってアタックできるかもしれません。
5.終身雇用がなくなる時代のリスクヘッジ
終身雇用が終わったと言われて久しい現代において、偏差値の高い大学に進学し、大企業に入ることは安定を意味しません。
どんなに「良い」と言われた企業でも、一瞬にして企業価値が失われてしまうことについて、疑いの余地はないでしょう。
グローバル経済の下、世界中のビジネスと生活が繋がっており、地球の裏側で起きていることが、自分の人生を変える可能性を持ちます。
いつ何時、自分の会社が外資系に買収されるかもしれません。
突然のM&A、倒産といったこと、あるいは子育てや介護といった個人的な理由で今の仕事が続けられなくなる可能性があります。
それに向けて、常に新しい職場に移れる準備と心構えが大切です。
「会社に入って上司の言われたことに対して忠実に業務を行う。」
もちろん、組織の中で生き抜くには必要な能力ですが、それだけでは足りません。
常に別の会社に務める可能性を考えながら、人生設計をする必要があります。
仮に、現在勤めている会社を、将来辞めなければいけない状況になった時にどうするのか。
「自分には関係のない話」と考えるのではなく、常に変化に対するリスク対処を考えておく必要があります。
常に自分の価値を高め続ける必要があるのがいまの社会人なのです。
6.定年後も働きつづけるために
運良く定年まで所属している会社にいられたとしても、決してそれは安泰を意味しません。
年金の受給開始時期は年々伸びています。
高齢者の定義を75歳以上からにする案が日本老年学会から提言されました。
また、マイナス金利が続くようであれば年金運用に多大な影響をもたらし、将来の年金受給金が今よりも大幅に減る可能性があります。
そのため、定年で仕事を終えるのではなく、生涯現役で働く時代はすぐにやってきます。
年齢とともに重ねる経験。それこそが自分の財産です。
特別なスキルや結果のみではなく、長年培ってきたものは何よりも代えがたい、他者に誇れる経験となります。
平凡と思われる業務においても、自分の中で工夫をすることは次に繋がります。
もちろん、日々ストレッチ目標を持ち仕事をしてきた人の方が、そうでない人よりも経験価値が高いことは論じるまでありません。
そういった経験を活かし、会社の内外で活躍の場を見つけることが大切です。
7.世の中・人に貢献する
世の中にはお金をもらって人に感謝される仕事があります。
例えば医者。患者は自分の身体を治してくれる医者に感謝し、お金を支払います。
飲食店で「ごちそうさま」というのも、同じ気持ではないでしょうか。
企業を顧客とする仕事、BtoB事業に携わる人はそのような経験が少ないかもしれませんが、本来仕事とは他者の役にたつからこそお金がもらえるのであり、商売や仕事の原点には他人の役に立つということを忘れてはいけません。
たとえ無償であっても他の人に役立つことができれば、自分の価値が認められたことにもなります。
8.会社人間ではない別の自分を発見する
会社勤めが長くなると、毎日同じ作業の繰り返しで、メリハリの少ないワークスタイルになってしまいます。
プロボノはまさにプロによるボランティア。自分のプロ意識を確認させ、個として自立したビジネスマンへの道へと繋がります。
会社の中で上長の目を見て仕事するのではなく、第三者とのやりとりの中での切磋琢磨が、個人の成長への導いてくれます。
リスクヘッジの観点、新たな自分の価値を見つける可能性、他者に感謝されること。
そのような機会をプロボノはもたらしてくれます。
短期的に見ると無償で自分の役務提供することは「損をする」と感じるかもしれませんが、長い目で見ると、プロボノは多くメリットを享受することになります。
社会に見つめられる自分、どこでもやっていける自信。ぜひ、そういったプロ意識を根付かせてくれるプロボノに触れてみてはいかがでしょうか。
プロボノの応募の仕方は?
プロボノの応募は、受け入れ企業や団体とプロボノ志望者のマッチング事業を行っている団体を通じて行われることが多いです。
国内ではサービスグラント(https://www.servicegrant.or.jp)や、プロボネット(https://www.probonet.jp)などが有名です。
募集要項には必要とされるスキル、実施期間、受け入れ先の業種などが明記されています。
派遣先企業を特定している場合もあれば、複数企業に対して募集が行われることもあります。
多くは中小企業や地方自治体、NPO団体など人手が不足している組織が多いです。
特に大企業の方が応募する場合、仕事のすすめ方や意思決定プロセスの違いがあり、応募者が受入団体に合わせた仕事のやりかたを心がける必要があります。
プロボノは無償での対応であるため、副業規定に抵触する可能性は低いですが、心配な人は応募前に所属会社の人事部などへの確認をお勧めします。
プロボノで人生を広げよう!
多くのサラリーマンにとって毎月決まった給与を貰うことは当たり前かも知れません。
しかし、本来お金を儲けることは、役務に対する対価を得ることであり、それに応じて金額が決まります。
市場原理によってモノやサービスの対価が決まり、それが従業員に分配される、その本質を知る必要があります。
そうでないと、市場価値がなくなった仕事にしがみつき、リストラされるかも知れないリスクを察知できなくなってしまいます。
毎月の給与と、自分の商品価値の差を常に意識し続けることが重要です。
ぜひプロボノ活動を通してそれに気づいていただけばと思います。
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