- 「集中力がない、続かない……」
「仕事の効率が上がらない……」
「やる気がでない……」
果てることのない負のスパイラル。
どうすれば、こんな状況から抜け出せるのでしょうか?
実は、食べ物や飲み物を少し工夫するだけで、驚きの効果が期待できるのです。
ここでは、食の観点から集中力アップの秘けつを紹介します。
集中力を高める。体の奥から効く食べ物・飲み物
では、どうすれば集中できる体を作ることができるのでしょうか?
それは、以下のようなものなどをバランス良くとることが第一です。
- 脳のエネルギーとなる食べ物
- 脳の機能を高め記憶力を良くする食べ物
- 体調を維持する食べ物
そして、集中力を妨げる食品をとらないようにすることも重要です。
以下順番に見ていきましょう。
1.脳にエネルギーを与える栄養素
◆ 糖質
糖質というと甘いものを想像しがちですが、甘くないものもあります。
例えば、お米やイモ類に含まれているでんぷんも糖質の一つです。
糖質は脂質、タンパク質とともに三大栄養素の一つに数えられ、単糖類、二糖類、多糖類に分類されます。
単糖類とはそれ以上分解されない分子構造のものをいい、ブドウ糖や果糖があります。
二糖類は単糖類が二つ結合したもので、ショ糖や麦芽糖、乳糖などが該当します。
多糖類はでんぷんやグリコーゲンなどで、分子が二糖類より大きなものを指します。
糖質は消化吸収され、糖分として血液に取り込まれることで、脳や体のエネルギーになります。
米飯、パン、パスタ、イモ類などに多く含まれます。
ダイエット中の人は、糖質を分解するサプリなど一緒に摂るのもいいでしょう。
◆ ビタミンB1
ビタミンもたくさんの種類があって覚えきれないほどですが、B1は糖質をエネルギーに変える触媒で、その消化吸収に必要不可欠なビタミンです。
チアミンとも呼ばれ、不足すると手足のしびれやむくみ、食欲不振を引き起こします。
さらに大幅に不足すると、昏睡や意識障害を伴うウェルニッケ脳症の原因となりますので、小まめに補給しましょう。
なお、アルコールはビタミンB1の吸収を妨害しますので、お酒はほどほどにしておきましょう。
ビタミンB1は豚肉の赤身や大豆に多く含まれています。
◆ 鉄
人間に必要不可欠なミネラルの一種で、成人の体内には3〜5グラム存在します。
体内の鉄分の約70パーセントは、赤血球のヘモグロビンに存在します。
鉄分が不足すると貧血を引き起こし、脳の血流が減少し、脳や体へのエネルギー補給がうまくいかなくなります
鉄分には肉や魚に含まれるヘム鉄と、野菜に含まれる非ヘム鉄があり、ヘム鉄の方が消化吸収されやすい性質を持っています。
また、タンパク質やビタミンCと一緒にとると吸収効率がよくなります。
豚や鶏のレバー、煮干し、ひじき、きくらげ、パセリに多く含まれています。
◆ マグネシウム
鉄と同じく、人間に必要不可欠なミネラルの一種です。
リンやカルシウムとともに骨を形成するほか、エネルギー代謝を促進します。
成人の体内には20〜30グラム存在し、約60パーセントは骨や歯に、リン酸マグネシウムや炭酸水素マグネシウムとして蓄えられています。
マグネシウムが不足すると、骨が弱くなるほか、不整脈、高血圧、筋肉のけいれんなどの症状が出ます。
また、とりすぎると下痢などの症状が出ることがあります。
大豆、きなこ、ごま、アーモンドなどに多く含まれています。
2.脳機能を活性化する栄養素
次に脳機能を高める栄養素です。
効率よく脳にエネルギーを取り込み、その状態を長く維持します。
◆ トリプトファン
アミノ酸の一種で、タンパク質を構成する20種類の有機化合物の一つです。
脳の神経伝達物質セロトニンを増やす働きをします。
セロトニンはドーパミン、ノルアドレナリンと並んで、三大神経伝達物質の一つで、精神の安定や、やる気(意欲)に働く物質です。
トリプトファンは体内で合成することができないので、食物から取り込む必要があります。
牛のレバー、豚ロース肉、鶏のむね肉、カツオやマグロなど魚の赤身、大豆などに多く含まれています。
◆ コリン
ビタミンBの一種と考えられている水溶性の物質で、脳内神経伝達物質のアセチルコリンの元になります。
アセチルコリンは、脳の海馬という記憶をつかさどる部分に作用して、認知力や記憶力を強化する働きがあります。
アルツハイマー型認知症患者の多くは、コリンが不足しているともいわれています。
コリンは、通常タンパク質をきちんととっていれば、不足することはありません。
ただし、物忘れや記憶力の低下が気になるようであれば、意識して補給しましょう。
牛や豚のレバー、大豆、卵、サツマイモ、ブロッコリーなどに多く含まれています。
◆ レシチン
細胞膜を構成する主成分、リン脂質の一種で、水と油をなじませる性質があります。
細胞や神経細胞の老化を防ぎ、活性化を助ける働きがあります。
原料によって大豆レシチン・卵黄レシチンなど種類がありますが、基本的な効能は同じです。
ただし、大豆由来のレシチンは肝臓の保護や動脈硬化の予防に優れ、卵黄レシチンは認知症や記憶力改善に優れているという特徴があります。
また、黄卵レシチンはコレステロールを多く含んでいますので、脂質が気になる人は、大豆由来のものがよいでしょう。
また、レシチンにはリラックス効果もあります。
ピーナッツ、大豆、卵黄、ゴマ油、小魚などに多く含まれています。
◆ EPA(エイコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)
不飽和脂肪酸の一種で、動脈硬化を防いで血圧を下げ、中性脂肪と悪玉コレステロールを減らすなどの効果で知られています。
こうした働きのほかに、脳内でシナプスを柔らかくし、情報伝達をスムーズにする働きもありますので、集中力維持に力を発揮します。
イワシ、サバ、サンマなどの青魚に多く含まれています。
EPA、DHAともに、加熱すると溶け出してしまうため、生食が一番です。
熱を加える場合は、煮汁や油も残さずとるようにしましょう。
◆ アラキドン酸
EPA、DHAと同様、不飽和脂肪酸の一種で、脳内の情報伝達をスムーズにします。
脳、肝臓、皮膚など体内の比較的広い範囲に存在しています。
極度のダイエットや、加齢によってアラキドン酸が不足すると、物忘れや集中力不足などを招きます。
体内で合成できないため、食品から摂取する必要がありますが、とりすぎると大腸ガンや前立腺ガン、アレルギー性湿疹、アトピー性皮膚炎などの発症リスクが高くなるといわれていますので注意が必要です。
卵黄、レバー、わかめなどに多く含まれています。
◆ 亜鉛
人間に必要とされるミネラル、16種類のなかの一つです。
抗酸化作用や免疫力の向上、タンパク質の合成のほか、脳内の神経伝達物質の量を調整し、記憶力を維持する働きがあります。
ミネラルは体内で合成できないため、食品からとる必要があります。
成人の体内には約2グラム存在するといわれています。
ただ、鉄などに比べると汗や尿から出て行く量が多いため、スポーツをよく行う人は、多めにとることが大切です。
カキ、ホタテ、ウナギ、豚のレバー、カシューナッツなどに多く含まれます。
◆ カルシウム
成人の体内に約1キログラム存在し、人間の中に最も多く蓄えられているミネラルです。
そのほとんどはリン酸カルシウムとして、骨や歯の中にありますが、一部はイオンとなって血液や筋肉、神経細胞に存在し、脳を落ち着かせる作用があります。
小魚や殻ごと食べる干しエビ、チーズなどの乳製品に豊富に含まれています。
ビタミンDが不足するとカルシウムの吸収が悪くなるため、ビタミンDを多く含む、きくらげ、しらす、サケ、干しシイタケなどと一緒にとるとよいでしょう。
3.疲れにくく、病気になりにくい体を作る栄養素
◆ β-カロテン
強い抗酸化作用を持つ色素で、水に溶けにくく、油になじみやすい性質を持っています。
β-カロテンは腸内でビタミンAになり抗酸化作用、免疫力向上、老化防止などの効き目があり、病気に強い体を作ります。
また美肌効果があるので、女性に嬉しい栄養素です。
また、肺にとどまったβ-カロテンは肺の粘膜を守りますが、喫煙によって消費されてしまうので、たばこを吸う人はこまめに摂取すると良いでしょう。
ニンジン、ブロッコリー、カボチャなどの緑黄色野菜に多く含まれます。
◆ ビタミンE
ビタミンA、ビタミンCとならぶ抗酸化ビタミンです。
活性酸素の働きを抑え、過酸化脂質の生成を防ぎ、老化防止や生活習慣病の予防に効果があるといわれています。
年齢とともに体内で作られるビタミンの量は減っていきます。
そのため、食品から効果的に補う必要があります。
ただし、過剰に摂取すると骨粗しょう症のリスクが高まり、肌のかゆみ、ほてり、頭痛、胃の不調などの副作用が出ることがありますので、1日6.5〜7ミリグラムの摂取を目安にするようにしてください。
ウナギ、ハマチ、カボチャ、アーモンドなどに多く含まれています。
4.集中力を損なわない食べ物
ランチを食べた後、急に眠くなって仕事に集中できない、という経験はありませんか?
これまで見てきたように、糖質は脳にエネルギーを与える必要不可欠な栄養素です。
しかし、その消化吸収スピードが速すぎると、血糖値が急上昇して眠くなってしまいます。
そこで、消化吸収速度の遅い糖質、いわゆる「低GI食品(グリセミック値の低い食品)」を選択することがポイントです。
- <オススメの糖質を含む食品(低GI食品)>
玄米、五穀米、麦ごはん、全粒粉のパン、サツマイモ、アーモンド
<消化の早い糖質を含む食品>
白米、パン、うどん、そうめん、パスタ、ジャガイモ、ニンジン
低GI食品を選ぼうと思っても、外食のときは選択肢がないこともあります。
白米やパン、パスタを食べる場合は量を少なめにし、よくかんでゆっくり食べる、先に野菜や豆腐、豆類など食物繊維の多い食品を食べるなど、工夫しましょう。
5.サプリメントで補う
インスタント食品やコンビニ弁当ばかり食べていませんか?
こうした食事に頼りすぎると、必要な栄養素が不足することがあります。
また、食べるべきものが多すぎて、どの栄養素をとったか混乱してしまうこともあるかもしれません。
そんなときは、サプリメントの活用も考えましょう。
カルシウムやマグネシウム、鉄分、亜鉛、EPA、DHAなど様々なものが市販されています。
自分に必要なものを選んで賢く利用しましょう。
集中力をすぐに回復。即効性のある食べ物・飲み物
それでも「疲れたな」「集中力がきれたな」と感じるときはあるものです。
ここでは、すぐに効果がある食品をご紹介していきます。
1.脳に栄養を与える
◆ ドライフルーツ
糖質が脳にエネルギーを補充します。
歯ごたえもあるので、かむことで覚醒効果も期待できます。
ゆっくりと消化吸収されるので、眠くなりにくく、食物繊維やビタミンも豊富です。
◆ バナナ
バナナには、でんぷん、ブドウ糖、ショ糖、果糖など複数の糖質が含まれているため、それぞれの消化速度が異なり、エネルギー補給効果が長く続きます。
ビタミンB1も豊富なので、消化吸収しやすく、セロトニンによるリラックス効果も期待できます。
また、牛乳やヨーグルトと一緒に食べると、カルシウムの補給にもなります。
2.大脳皮質を刺激する
◆ チョコレート
脳への栄養補給のほか、テオブロミンという物質が含まれていて、大脳皮質を刺激し、集中力と記憶力を高める効果があります。
また、チョコレートはポリフェノールが豊富なので、活性酸素を抑えるほか、コレステロールを減らし、血圧を下げる働きもありますから、まさに一石三鳥、四鳥の効果が期待できます。
3.目の機能回復
◆ ブルーベリー
目が疲れると液晶画面や書類の文字が見づらくなり、効率が落ちてしまいます。
目の疲れの原因の一つに、網膜にあるロドプシンという物質が不足することがあります。
ロドプシンは外からの光を電気信号に変えて、脳に伝達しています。
そのロドプシンが減ると、効率が落ちて目が疲れるのです。
ブルーベリーはきれいな濃い青の小さな果実です。
あの青色は、含まれているアントシアニンという色素の色なのです。
アントシアニンにはロドプシンを再生する働きがあるため、目の機能回復に効果があるといわれています。
4.目を覚ます
◆ カフェイン(コーヒー、紅茶、日本茶など)
覚醒作用があり、眠気をとります。また鎮痛作用があるほか、体内の燃焼機能を高めるため、ダイエットにも効果があるとされます。
ただし、とり過ぎると胃痛を引き起こしたり、高血圧の原因になったりすることがあります。
1日に0.4グラム程度(コーヒー4〜5杯、紅茶・緑茶13杯程度)なら摂取しても問題ないようです。
◆ ガム、おしゃぶり昆布など、かむ食品
かむことで脳内にオレキシンという覚醒作用のある物質が分泌され、集中力が維持されます。
集中力をアップする食べ方・飲み方
では、実際にはどのようなものを食べればよいのでしょうか?
食事ごとにオススメのメニューを見ていきましょう。
1.朝食
糖質、コリンやレシチン、βカロテンを含んだもの。
例:ハムと卵をのせたトースト、緑黄色野菜ジュース
2.昼食
DHAやEPA、コリン、レシチン、ビタミンB1を含んだもの。
例:サバの味噌煮、サンマの塩焼き、カツオの刺身、ブリの照り焼き、冷奴や納豆
3.夕食
疲れを取るため、ビタミンB1を含んだもの。
例:豚肉のソテー、豚の角煮、トンカツ、レバー炒め
4.飲み物
カフェインを含む飲み物。
例:コーヒー、紅茶、日本茶、抹茶、市販の目覚ましドリンク
5.間食
脳の回復を助けるもの。
例:ナッツ類、ドライフルーツ、チョコレート
ここにあげたものはほんの一例ですので、自分の好きなメニューから、バランスを考えて組み立ててみてはいかがでしょうか?
ランチに行くのが楽しみになること間違いありません。
集中力は鍛えられるか?
「そもそも集中力って鍛えられるの?」
そんな疑問を持つ人もいるでしょう。
大丈夫。
心と体の状態を健康に保てば、集中力は自然とアップしていきます。
1.集中力と脳(α波、年齢)
α波という脳波を聞いたことがありますか?
脳波がα波の状態になると、β-エンドルフィンというホルモンが分泌され、脳を活性化し集中力や記憶力が上がるといわれています。
α波は心身ともにリラックスした状態のときに出ます。
年齢を重ねると、α波の周波数と量が低下します。
そのため、加齢とともに記憶力が衰えて、人の名前がすぐに出てこないなどの症状が現れるのです。
α波が十分に出ている状態を、長く作り出すことができれば集中力が続きます。
2.集中とリラックス(緊張と弛緩のインターバル)
そもそもスーパーマンでもなければ、ずっと集中し続けるのは不可能です。
成人が集中を持続できるのは、一般に40〜50分、最長でも90分といわれています。
そのため、大学の講義は90分単位で構成されているのです。
持続時間には個人差がありますが、他のことに気を取られたり無関係なことを考えたりし始めたら、集中力が失われたサインです。
集中すると脳はたくさんのエネルギーを消費し、疲労がたまります。
ですから、無理をせず適度に休憩を挟むことが大切です。
集中60分に休憩10分、あるいは、集中30分に休憩5分など、自分に合った周期を見つけましょう。
3.集中できる脳と体を作る(規則正しい食事、生活習慣、睡眠など)
- 「だるい」「眠い」「頭が重い」
こんなときは、誰でも集中することができません。
日頃から体調管理に気を配って、食事から必要なエネルギーを効率よく取り込めるよう、脳や体、ホルモンのバランスを健康な状態に保っておくことが大事です。
まずは毎日の生活習慣や食習慣を整えましょう。
具体的には、
- 朝食を抜かない
- 三食きっちりと規則正しくとる
- 腹八分目
- 十分な睡眠をとり、疲れを翌日に持ち越さない
といったことに注意しましょう。
食品とサプリを組み合わせて集中力を高めよう

集中力を高めて長く維持する方法を、食べ物と飲み物に焦点を当ててご紹介しました。
毎日の生活習慣や食習慣を見直し、バランスの良い食事をとって脳にα波が出る状態を作りましょう。
また、「集中力が落ちてきたな」と感じたら無理をせず休憩する、即効性のある食品やサプリメントをとるなど自分にあったリフレッシュの方法を取り入れてみてください。
いつでも最高の状態で仕事をして、効率アップを目指しましょう。